ライブやコンサートで素晴らしい演奏をできることはもちろん、様々なニーズに対応するための努力も、演奏のプロにとっては大事なこと。
現場によっては、音楽だけでなく、時にダンスや演技、トークを勉強したり、ファッションやメイク、スタイルといったビジュアルの向上など様々な要素が求められます。
それは、学校で学ぶことは難しく、様々な現場の経験を経て必要を感じ、都度勉強をしたり磨いていくことで、スキルとして蓄積されていきます。
またレコーディング仕事などでも要望は様々で、「クセなく」「誰々っぽく」「フレーズ完全コピーで」など、本来の個性を消さなければならない場面でどこまで対応できるか?というところも実は腕の見せ所。
もちろん、自分らしさを最大限に活かして、場を盛り上げ話題になるというミッションの現場もあります。
プロの中には、専門性に長けた特化型、いかようにも化けられる対応力型と、様々なタイプがいますが、
大切なのは「今何が求められているのか」そして「どう応えられるのか」。
つまり「誰のため、何のための演奏か?」という部分です。
「パーティーの歓談中のアトラクションとして演奏を頼んだら、お客様が話に盛り上がってうるさく、演奏を聞かないと怒って帰られた」
「パーティーの演奏に素晴らしいコンクール受賞歴の演奏家を呼んで、皆が静かな乾杯前に演奏を頼んだら『前座にまわされた』と文句を言われた」
「展示・即売会の足休めのアトラクションとして演奏を呼んだら、ステージを盛り上げすぎて、商談中にお客様の意識が演奏の方に逸れてしまった」
どれも実際にあったイベント演奏での失敗談です。
ジャンルは色々あれど、演奏家なら最初は「素晴らしいライブやコンサート」を目指して努力します。
「自分がやりたい音楽」「自分が主役のステージ」「演奏を聞きに来た観客の前」での演奏です。
特にまだファンのいない無名の演奏家であれば、学校関係者と自分の知人、家族の知人など、「自分を見に来てくれた人」の前でしか演奏したことのない人も多くいます。
ですが、実際の演奏仕事、特にイベント演奏は、それだけではありません。
「パーティーが盛り上がること」「即売会の商品が売れること」「静かな語らいをより優雅な気分で」など、
そんな「音楽以外を目的としたイベントの成功」のために「音楽で何ができるのか?」
現場の目的に応じて、求められる選曲、パフォーマンス、トーク、音量まですべてが変わってきます。
また、ライブやコンサートであれば、基本的に「入念な準備」を行うことができますが、演奏の現場では、時には急なリクエストがくることも。
さらに、レコーディングの仕事などは急な依頼も多く、現場で初めて演奏する曲を知り、楽譜をもらうといったことも多々あります。
その中で、作曲家やプロデューサーの要望に応えていく、演奏家の「要望を受け取る能力」とそれに応じるための「引き出しの多さ」も大切な要素です。
現場の対応力やサービス精神の核として「自分は今誰のため、何のためにどんな演奏をすればいいのか?」その意識が求められます。